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戯れ言
〈閑side〉
「お願い、します」
そう言った男の子の声と姿は弱々しくて、どうにも気が滅入っている時のただの戯れ言ぐらいにしか聞こえなかった。
「何言っちゃってんのー? まだ中学生のクセに、どこでそんなこと覚えてきたか知らないけど、そんな軽々しく―しかも男が言うもんじゃないよォ」
「……でも」
「ん?」
俯いたまま彼は、それでも俺から手を離すことはなく、食い下がった。
「貴方が、ここで……してるの、見たことあって」
「……」
「男の、人と」
今すぐ頭を掻きむしりたい衝動に駆られた。流石に出来ないから髪を掻き上げるだけにとどめたけど。
あぁ、イライラする。
いいよ、わかった。
衝動だけでそんなこと口走ったらどうなるか、身を以て教えてやる。
後で思い切り後悔して、泣きわめけばいい。
「………ついておいで」
その時の伊吹の、救われたような顔ったら。
まるでこの世の全ての厄災から解き放たれたみたいに幸せそうに笑ったんだよ。
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