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まさか来てくれるなんて
〈伊吹side〉
真澄からLINEが来て、話が終わったという旨の連絡を受け取った。きっと、もう閑さんからの連絡の一切を無視する必要がなくなったってことなんだと思う。
着替えるのがだるくてそのまま着ていた制服のネクタイを取る。
こんな時間に自分の家にいるのがなんだか新鮮で、落ち着かなかった。
薄暗く、静かな部屋に一人でいると、頭に心配そうな両親の声が過ぎる。
「大丈夫だって言ってるのに」
あの二人は、心配症が過ぎる。目の届かないところにいるからなのかもしれないけど。
──ピーンポーン
「!」
少し間延びしたインターホンの音がする。一回きりのそれは、何回もヤクザの取立てのように鳴らす真澄とは違う。
……真澄以外にインターホンを鳴らすなんて、セールスか何かだろうか。
一応確認してみると、画面に映っていたのはあまりにも予想外な人だった。
体が勝手に動いて、玄関へ駆け出す。フローリングの床じゃ、靴下を履いたままの足は滑ったけど、気にしてられない。
──ガチャッ
「しずか、さん……っ!」
「うわっびっくりした」
脱いでそのままにしていたローファーを突っかけて勢いのままに抱きつくと、少しびっくりしたようだけど、閑さんはきちんと俺を受け止めてくれた。
「よか、よかった……」
言わなくちゃいけないこと、まだ言えてないから。
「……」
涙声の俺を、閑さんは何も言わずに背中を撫でてあやしてくれた。
「……俺、自分よりデカイ奴あやしたの初めてだよォ」
「中身はあんたより5つ下です」
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