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未遂
──ガチャ
「桜和副会長うるさいデスよー廊下の端まで声が聞こえマシタ」
「だ、だってさぁ……! 何で伊吹……っぶはっ!」
「黙れ阿呆」
「ぐは……っち、ちょっと神楽ぁ……今お腹殴るのはナシでしょ……」
「ナイスプレー デス、神楽生徒会長」
痛みに顔を歪める桜和と、キラキラの爽やかな笑顔で親指を立てる佐神。
「だ、大丈夫ですか……西条先輩」
「うん、だいじょーぶ……ありがとう……愛里紗ちゃん……」
顔を真っ青にして無理矢理笑顔を作っている。地味に震えてるし、目尻に涙が浮かんでるけど、ほっとくことにした。
しばらくそのまま悶えておけ。
そこで、顎に手を当てて考え事をしていたらしい佐神が口を開いた。
「……ところでお二人」
「ん?」
「桜和副会長が唐突にキスしたいなんて洩らしたから俺たちはこの部屋を出ていった訳デスが」
思わず体が後ずさりしようとするのを、腕を掴まれて逃げられない。いや、佐神、痛い痛い。
「どうだったんデスか?」
「ど、どう……?」
「キス、出来ましたか?」
ぶわぁっと顔が熱を持つ。
「事件並みのキスマークと噛み跡は相変わらずデスけど……その様子だとしてないんデスね」
「いやぁ、だってさ矜持、聴いて?神楽がね、もう首にちょっとキスしたり噛み付いたりしただけで……うっわ!? 危なっ!?」
「お前の思考回路の方が危ないから安心しろ」
握り締めた拳は桜和のお腹の前で止められた。
「可愛かったよ? 神楽」
その言葉に赤くなってしまったのがムカついて、桜和の足を軽く踏んでやった。
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