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進みましょう
「……ない」
結局、全ての棚を調べても見つからず、もう少しで予鈴が鳴る頃だった。
「てかあっついよね……締め切った部屋でこの労働はきついわ……」
「汗だくだ……風見先生は一体どこと勘違いしたんだ……」
二人で棚に背中を預けて座り込む。床もホコリっぽかったけど気にしなかった。
「うー……………」
意味もなく俺の左側で唸る桜和へ目を遣ると、顔をしかめていた。
「どうする? 出てありませんでしたって言うか、もう一度探すか……」
「でももう予鈴鳴るよね」
「まあ……」
──キーンコーン………
「……鳴ったね」
「鳴ったな」
あまりにグッドタイミングな予鈴に俺と桜和は顔を見合わせて大きく溜め息をついた。
「ここからじゃどうせ本鈴までに間に合わないしなぁ……」
「職員室なら間に合うんじゃないか?」
「いや、でも風見先生授業入ってると思うよ。今行ってももういないんじゃない?」
はぁ、とまた二人で深く嘆息する。
「……いいよ、もう。最後まで付き合ってやる」
「え」
惚けた間抜け面の桜和の鼻先に指を突きつける。
「ただし」
ただで甘やかしてなんかやらない。
「責任は全部お前がとれよ。俺が怒られるとかナシだからな」
「……ぅ、わぁー……何かプロポーズみたいじゃん? 『アンタのせいよ、責任とって!』みたいな」
「踏むぞ」
いつのラブコメだよ。
「大体、責任も何もそういう方面は特に進んでないだろ」
キスとかも、してないし。
言いながら立ち上がろうとしたら、桜和に引っ張られてそれは叶わなかった。
「ちょ……っ!」
「じゃあ、今する?」
倒れ込んだ先は、桜和の膝の上。横向きに座らされて、桜桜和は片足を立てているから、それを背もたれに、桜和の上で顎を捕らえられていた。
「い、ま……」
「そ、いま、ここで。この体勢で」
逃がしてあげない。
互いの息がかかる距離で、そう囁かれた。
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