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実愛情事*

 ──何回果てただろうか。  薄暗かった外は真っ暗になって、夜空にぽっかりと満月が浮かんでいた。  じんわりと滲む視界でそれをなんとなく認識する。ハッキリ言って、実のところ見えてるその明かりが本当に真円なのか危うい。それほどまでに今の俺の頭はラリっていた。 「ひ、ぁ………あ、や……」  俗に言う『抱き地蔵』とか、そういう体勢になって、普段はあまりしない体勢に馴れずにいた。  ……滅多にしないのは多分、俺の方が背が高いせいなんだけど。  ぐったりと力の抜けた全身を閑さんに預けるように寄りかかる。肩口に顔をうずめたらふわりと閑さんの香りがして、体が震える。 「しずか、さ……もうむり、です……っなにも、出ない……」 「んー……?」 「──っひあっ!」  つつ、と繋がった部分の縁をなぞられて背筋がびりびりする。 「そんなこと言ってもさァ……」 「んっ、や……」  そっと耳に唇が当たるくらいの距離で意地悪に閑さんは囁く。 「伊吹のここが、離してくれないんだよ? 自分のカラダなんだから、よく分かるでしょ?」 「そ、んな…知らな……」  耳朶が火傷するんじゃないかっていうくらい熱い。力が入らなくて、今すぐベッドに倒れ込みたいのを、閑さんの腕に阻まれる。 「あー……こんな可愛い恋人、外歩かせるのは心配だなァ」  こいびと。響きが、とても心地いい。  そっか、こいびと、なったんだ。俺と閑さん。 「──っ、う、ゎ……締まった……」 「い、わないで……くださいっ! んん…っ」 「……嬉しい? 『恋人』」  とさ、とベッドに横たえられて、さっきまでとまるで視界が変わる。見下ろしていた閑さんに、見下ろされる。 「……う、れしい……です」

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