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策略

「ねーぇ、伊吹」 「ん……何ですか?」  事が終わって、所謂ピロートークってやつ。普段は俺の意識が飛んで終わるから、これも珍しい。  さらさらと頭を撫でる手が気持ちよかった。 「……お前、どっか行っちゃうの?」 「………………はい?」  何のことだ、と顔を顰めると、閑さんは俺の頭から手を離して、自分の髪の毛をぐしゃぐしゃと両手で荒くかきむしった。 「あーくそっ! やっぱハメられたかァ!」 「ちょ、夜中にうるさいです! 何のことですか」  俺もう眠いの限界なんですけど……とは言わないでおく。少しでも気を緩めればすぐに夢の中に旅立ってしまいそうだ。 「で、何ですか」 「マスミちゃんにハメられた」  マスミ、真澄……真澄? 「……生徒会会計の嗣川真澄ですか?」 「そォー! マスミちゃん! 伊吹の親が伊吹の体調を気にして転校させようとしてるとか言ってきたんだよォ!」 「はぁ……」  でもそれ。 「あながち嘘じゃないですよ?」 「は!?」 「過去形ですけど」  実際にその相談はされた。かなりモメた。 「海外なんて行けるかって言って拒否りましたけど」 「……あっそォ……ねェ、マスミちゃんの家隣なんでしょ? ちょっと襲撃してもいいかなァ」 「却下です」  イライラが収まらないらしい閑さん。綺麗なメープルハニーの髪が長い指に絡まってぐちゃぐちゃだった。 「……それより、ここにいてくださいよ」 「うっわ、もう今日のお前何なの……素直可愛すぎ」 「違います、もう絶対明日まで動けないから傍にいてくれないと困るってことです」  何が違うのか自分でもよくわからなかったけど、とにかくこの人をあまり調子に乗らせる訳にもいかないから反論する。 「はいはい、かわいーかわいー」 「人の話聞けよアンタ……!」

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