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かわいー弟

「つまりうちのかわいー弟が家で去年の夏休み中みたいに腑抜けちゃってるわけだ」 「……その原因が俺だって言う結論に行き着く理由を知りたいんです」  すると、閑さんが言った。 「ヤだなァカグラくん。いくら奥手な君でも一回くらいは好きな人のこと考えてヌいた事あるでしょ?」 「ぬ……っ!?」  こんなところで何言ってんだこの人! 「あのですね」 「見っけた」 「っ!?」  バンッとテーブルに手が叩きつけられて、目の前に同じ制服の袖が見える。 「……桜和?」 「……んっとに……バ神楽」 「!?」  少し汗をかいて息を切らせた、結構本気で怒っているっぽい桜和と、その後ろに……桜和より息を切らせた月詠がいた。 「……閑さん」 「あれ、伊吹もしかして怒ってたりするかな? ってか体力無いくせに走ったの? 大丈夫?」 「……」  急に現れた二人に目を白黒させていると、桜和が俺の手を取って歩き出した。 「え、ちょっ痛……っ! 桜和! どこ行くんだよ、俺、お金払ってな……!」  なんとかカバンを掴むことはできたけど、勢い余ってテーブルの角に腰をガツン!と盛大な音を立ててぶつけた。痛い。 「奢らせとけばいいよ。いいから、何であいつらと一緒にいるの」 「お、桜和のことで話があるって言われて」  言いながら奇妙な視線を浴びせる店員、客の間を足早に通り抜けていく。  一生懸命ついていくけど、明らかに桜和の方が背が高い。つまり脚も桜和の方が長い。桜和は早足程度だけど、俺はもう半分くらい駆け足。って、本当にどこ行く気だお前。 「もう……神楽、絶対に将来詐欺とか引っかかるやつだ  歩調を緩めることなく真面目なトーンでそんなこと言うものだから、多分相当キてる。何でだ?  しばらく歩いて、いきなり足を止めるものだから、止まれなくて俺は桜和の背中にぶつかった。 「うぐっ」  もう、なんで今日はこんなに痛い思いしなきゃいけないのか。さっきのファミレスの他に、学校でもカッター使ってるところにぶつかってこられて左の薬指切ったし。  まあ、それはともかくとして、桜和が立ち止まったのは、 「『西条』……お前の家?」 「桜和くんちょっとアタマ来ちゃったので」 「!?」  ちょ……っ!? 何だ怖い! さっきの閑さんの言葉も頭から離れないし!  ズルズルと半ば引きずられるように敷地の中へ連れていかれた。

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