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第一章・3
「どうもありがとう。相席、ごめんね」
「いえ。別に」
言葉少なに返事をし、すぐにスマホに目を落としてしまう少年だ。
それでも竜也は気を悪くせずオーダーを済ませ、彼を観察した。
少し癖のある、それでいてサラサラの髪。
白くきめ細かな肌に、大きな黒い瞳。
ツンとした鼻は、思わずちょっと指先で弾いてみたくなる。
小柄で線の細いその体つきから見て、少年の第二性はオメガではないか、と思われた。
やがて竜也の頼んだコーヒーと、チーズケーキが運ばれてきた。
ケーキは、二つ。
そのうちの一皿を、竜也は少年の方へ差し出した。
「はい。これ、相席のお礼」
「え?」
顔を上げ、少年は目を円くした。
「そんな。結構です」
「いいから。もう、頼んじゃったし」
「結構です。人に施しを受けるほど、困ってません」
「施し、だなんて。私はもっと、軽い気持ちで」
「これでも僕、ちゃんと稼いでますから」
なかなか一筋縄ではいかない、少年だ。
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