4 / 107

第一章・4

 不愛想で頑なな子だったが、竜也はそんな会話すら楽しかった。 「しっかりしてるね。稼いでる、って、何をしてるの?」 「そ、それは」  初めて口ごもった少年に、竜也は身を乗り出した。 「まだ、10代だよね。バイト?」  いろいろと付きまとってくる竜也に、この少年は困ってしまった。  そこで、彼がドン引きするような事実を、あえて伝えることにした。 「大きな声では、言えませんが」 「じゃあ、小さな声で」 「……ある人の、愛人をしています」  竜也は息を吸った後、大声を出してしまった。 「ええっ!?」 「しっ。声が、大きいです」  慌てて口を手で押さえ、竜也は謝った。 「いや、ごめん。ちょっと、驚いた」 「軽蔑しますよね。じゃ、僕はこれで」  再びスマホに目を落とそうとする少年に、竜也は懲りずにチーズケーキを差し出した。

ともだちにシェアしよう!