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第一章・4
不愛想で頑なな子だったが、竜也はそんな会話すら楽しかった。
「しっかりしてるね。稼いでる、って、何をしてるの?」
「そ、それは」
初めて口ごもった少年に、竜也は身を乗り出した。
「まだ、10代だよね。バイト?」
いろいろと付きまとってくる竜也に、この少年は困ってしまった。
そこで、彼がドン引きするような事実を、あえて伝えることにした。
「大きな声では、言えませんが」
「じゃあ、小さな声で」
「……ある人の、愛人をしています」
竜也は息を吸った後、大声を出してしまった。
「ええっ!?」
「しっ。声が、大きいです」
慌てて口を手で押さえ、竜也は謝った。
「いや、ごめん。ちょっと、驚いた」
「軽蔑しますよね。じゃ、僕はこれで」
再びスマホに目を落とそうとする少年に、竜也は懲りずにチーズケーキを差し出した。
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