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第二章・2

「午後は人と会う約束があるので。午前中だけで済むなら、行きます」 「やった!」  竜也は喜び、朋とお喋りでもしようと身を乗り出したが、彼は相変わらずスマホに夢中だ。 「いつも、何やってるの? ゲーム?」 「電子書籍、読んでます」 「へえ……」  意外だった。  竜也はてっきり、朋も若い子にありがちな、ゲームや動画を楽しんでいると思っていたのだ。 「どんな本? マンガ?」 「竜也さん、知らないと思います」 「言ってみてよ。もしかすると、知ってるかも」 「今読んでいるのは、萩 雀斗の『海の次郎鯨』です」  あ、もしかして。  竜也は、思い当たった。  確か、その作家の短編が、小学生の頃、国語の教科書に掲載されていたのでは? 「ひょっとして。『菊枝ばあさんと鶴』を書いた人?」  その竜也の言葉に、朋は顔を上げた。

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