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第二章・4

 大小さまざまな、色とりどりの水槽を巡り、竜也と朋はイルカの前で足を止めた。  イルカプールには、深さが必要だ。  二階と一階を打ち抜いて作られた水槽の一階に、二人はいた。  ここからは、自在に泳ぐ水中でのイルカの姿を眺めることができる。  周囲には、愛らしいイルカにはしゃぐ他の客がいたが、朋はなぜか浮かない顔だった。 「どうしたの? イルカは嫌い?」  竜也は軽くそう訊ねたが、返ってきた答えは重かった。 「この子たち、自由が無いですよね」 「え? ああ、まあ。そうだね」 「快適な環境で過ごせて、食べ物にも困らない。でも、自由が無い」  そうかと言って、たとえ外に放したとしても、自然の荒海では生きられない。  つぶやくような朋の声は、まるで自分に言い聞かせているかのようだった。 「……僕と同じだ」  その言葉に、竜也は気づいた。 (この子は、イルカと自分を重ねているんだ)  快適なマンションを与えられ、食べるに困らないお金を与えられている。  だが、愛人である限り、パトロンの手からは離れられない。  竜也は言葉を探したが、いい考えが浮かんでこない。  そこで、朋の手をそっと握った。 「竜也さん?」 「いいから」  朋も、何も言わずに竜也の手を握り返した。  ただ、それだけ。  互いのぬくもりを感じ合い、過ごした。

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