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第四章・4
カウンターに掛けた竜也は、隅にひっそりと座っている朋の姿に喜んだ。
すぐに真横に掛けて、オーダーした。
「たくさん、席は空いてますけど」
「今は、ぜひとも朋くんの傍にいたくって」
竜也は、突然に明かされた父について、朋に語った。
「いまさら、どんな顔して会えばいいんだろう」
「会わなければ、いいんじゃないですか?」
それが、と竜也は父が末期がん患者であることを打ち明けた。
「会わなきゃ会わないで、後悔しそうな気がするんだ」
「末期がん……」
朋は、正吾を想った。
(何だか、ガンで余命のあまりない人が多いな)
竜也の父が正吾と重なり、朋はうなずいた。
「それなら、会っておいた方がいいですね」
「やっぱり?」
「お礼を、きちんと言わないと」
「そうか。お礼か……」
父の養育費のおかげで、ここまで育った。
父の口添えで、就職もできた。
竜也もまた、うなずいていた。
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