25 / 107

第五章 社長と父と、愛人と婚約者と。

 月曜日。  定刻の30分も前に、竜也は朋と一緒に待ち合わせのホテルへ来ていた。 「少し、早かったかな」 「かなり、早いです」  まったく、と朋は竜也の脇腹を肘で小突いた。  照れ笑いも、心なしか引き攣る竜也だ。 「緊張してきた」 「初めの挨拶、考えてた方がいいかもしれませんよ?」 「そうか。そうだな」  だが、何と言おうか。 「これまで、ありがとう。父さん」 「初めて、会うんでしょう?」 「じゃあ。初めまして、父さん」 「送金は、してくれてたんでしょう?」  頭を抱えてしまう竜也の耳に、聞きなれた声が入って来た。 「あれ? 早いのね、竜也」  母・理沙が到着したのだ。

ともだちにシェアしよう!