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第五章・2
母さん、と声のした方へ竜也が目を向けると、珍しくお洒落をしていると解るほど、着飾った理紗がいた。
髪を明るく染め、リップの色も強い。
気さくな雰囲気は相変わらずだが、久しぶりの父に会うために、頑張ったのだろう。
そして、その隣に背の高い男が立っていた。
ドクン、と心臓が打つ。
一瞬にして、口がからからに乾いた。
「竜也、紹介するわね。この人が、父さんよ」
あまりにも、あっさりと。
笑顔の母が、逆に不自然だ。
しかし男は頬を緩め、にっこりと笑った。
「大きくなったなぁ、竜也」
竜也は、激しく打った心臓が、口から飛び出すほどに驚いた。
「……来栖社長!?」
その顔は、社誌で時折見かける、社長と同じものだったのだ。
「だから言ったでしょ? この人のコネで、竜也は採用されたんだ、って」
母が、笑う。
「あ、悪趣味なドッキリ……!」
だが今度は、その社長・来栖 正吾の顔が驚いた表情に変わっていた。
「と、朋?」
ぺこり、と朋は正吾にお辞儀をした。
そんな二人に、竜也は戸惑った。
「社長。朋くんと、お知り合いで……?」
「僕は、正吾さんの愛人なんです」
顔色一つ変えずに言った朋に、竜也は息を飲んだ。
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