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第八章 お別れ
竜也と朋が出会って、三ヶ月ほど時が過ぎた。
季節は移ろい肌寒くなってきたが、二人の仲は温かだ。
今日も職場で、竜也はぼんやり朋のことを考えていた。
間もなく、クリスマス。
何か素敵な、イベントを……。
そこに、私用のスマホが突然鳴った。
『竜也。今、いいか?』
そんな風に、気軽に電話をかけて来たのは、父・正吾だった。
「いいわけないよ。勤務中だよ?」
『おや? 今日は日曜じゃなかったかな?』
「月曜日、です!」
『いやぁ。入院していると、曜日が解らなくなる』
すまん、と笑う正吾の声音は、晴れやかだ。
気分がいいのかな、と竜也は考えた。
「父さん。体調、いいみたいだね」
『ああ。今日はな、ずいぶんと楽なんだ』
正吾は今、ホスピスに入居している。
ホスピスとは、末期ガンや難病の人など終末期患者に対して、やすらかな最期を迎えてもらうための治療やケアを行う施設だ。
屋敷で看取りたい、と言う正妻・十和子(とわこ)を押し切って、正吾はホスピスに入居することを望んだ。
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