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第八章・3
朋は、日中にかかって来た竜也の電話を喜んだ。
彼と付き合うようになってから、朋は少しだけ寂しがり屋になった。
竜也が傍にいないと、なぜだか悲しくなるのだ。
『それでね。明日、父さんの面会に一緒に行こうと思って』
「いいですね。行きましょう」
『良かったら、何かお見舞いの品を準備していて欲しいんだ』
「はい」
『それから……』
「?」
竜也の声が、急に聞き取りづらくなった。
「もしもし。竜也さん?」
『……愛してるよ』
「!?」
『じゃあ、ね』
通話は、途絶えてしまった。
だが、竜也の残した甘い言葉は、しばらく朋の耳を痺れさせていた。
「もう、竜也さんったら。……恥ずかしげもなく!」
唇を尖らせたが、顔がひとりでにほころんでくる。
ちょっとだけ寂しくなくなった朋は、お見舞いの品を探しに街へと出かけた。
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