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第八章・5
「父さん。これは……!?」
「クルス・不動産の前身は、来栖組。指定暴力団の一つだった」
理紗と引き裂かれてからの正吾は、家を、組を憎んだ。
社長の跡を継ぎ、その後は暴力団の看板を下ろして、クリーンな会社へと組を変貌させたのだ。
だがしかし。
「私が死ねば、十和子が動くだろう。あいつは、息子の勇生(いさお)を社長に据えて、組を復活させようと目論んでる」
「そんな!」
少し咳込んだ正吾に、朋が急いで服を羽織らせた。
「正吾さん。もう、この辺で」
「ああ、すまないな」
顔を上げた正吾は、笑顔に戻っていた。
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