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第八章・6

「ところで。朋は、竜也とうまくいってるのか? ん?」 「竜也さんは、とても優しい人です」 「そうか。良かったな!」  でも、と朋は少し不満を口にした。 「でも、なかなか僕のマンションに、引っ越してきてくれません」 「朋! そ、それは!」 「ヒモ男みたいでイヤだ、なんて言うんです」  してやられた、と顔をゆがめる竜也を、正吾は笑い飛ばした。 「小さいことを気にするな! 一緒にいられるだけ、幸せなんだからな!」  では、と正吾は手をひらひらさせた。 「早く帰って、引っ越しの準備でもしなさい。私はこの後、理紗さんが来てくれることになってる」  だから邪魔するな、と正吾は片目をつむって見せた。 「じゃあ、父さん。また来るから」 「正吾さん、お大事に」  手を振る正吾を見ながらドアを閉め、竜也と朋は並んで歩き始めた。

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