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第九章 見知らぬ男
父・正吾の訃報に、竜也はとりあえず身の回りのものをかき集めて、朋のマンションに走った。
正吾から注がれていた愛を知った、朋。
そして、その正吾をいつしか愛していたことを知った、朋。
そんな彼が、この訃報に正気でいられるはずがない、と考えたからだ。
案の定、マンションの朋はソファに深く腰掛け、うなだれていた。
「朋!」
「竜也さん……」
正吾の死は、SNSのニュースで知ったのだ、と言う。
誰が公表したのか知らないが、気の早いことだ。
「正吾さんが、本当に死んでしまいました……!」
「朋。人は誰でも、いつかは死ぬんだよ。特別なことじゃないんだ」
「イヤです。竜也さんは、死んじゃダメ……」
どんどん弱弱しくなっていく、朋の声だ。
竜也は、その小さな体を抱きしめた。
「私は、生きてるから。朋の傍に、今こうしているから」
「絶対。絶対、ですよ……」
そうやって二人で抱き合い、悲しみを分かち合っている時、竜也のスマホが鳴った。
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