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第九章・2
『もしもし。竜也?』
「母さん」
『知ってる? 正吾さんのこと』
「ああ。会社で、訃報が知らされたよ」
母・理沙は、葬儀の件について話してきた。
『辛いだろうけど、正吾さんのお葬式には出席しちゃダメよ?』
「ど、どうして?」
『それは、母さんも同じ。私も竜也も、この世にいてはいけない人間なの。正妻の、十和子さんにとっては、ね』
「あ……!」
改めて竜也は、自分の立場について考えさせられた。
父は死の間際ギリギリになって愛情を与えてくれたが、それは正妻には面白くないところだろう。
その息子・勇生にとっても、だ。
『申し訳ないけど、朋くんにもそう言っておいて。彼もまた、いてはいけない人だから』
「うん……」
『ちゃんと、あったかくして。そして、食べるのよ?』
「解った。そうする」
通話を終え、竜也はやるせない溜息をついた。
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