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第十章・4

 葬儀に、という名目だったが、その晩は通夜だった。  竜也や朋、そして理紗が斎場に着いたころには読経は終わり、遅れて来た人間たちが焼香している。 「父さん。病室と変わらないね……」  祭壇の周りには、数えきれないほどの供物が、花が、弔電が供えられている。  湯灌を施してもらったのか、正吾の顔つきはふっくらと張りがあり、穏やかだった。  焼香をし、手を合わせ、竜也は朋の体を支えた。 「大丈夫?」 「う、うぅ……」  嗚咽を漏らす朋をいたわっていると、マンションに現れた二人の男が近づいてきた。 「どうぞ、こちらへ」 「親族の席へ、どうぞ」  いや、あの、と竜也は眉をひそめた。 「連れが、ちょっと苦しそうなので。別室で少し休むわけには、いけませんか?」  二人はやはり顔を見合わせ、小声でやり取りをした後、こちらを向いた。 「承知しました」 「今、部屋を用意させます」  ホッとした竜也だったが、残念ながら話はそれだけでは終わらなかった。

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