59 / 107
第十一章・2
「竜也さん。祭壇の方へ戻らなくてもいいですか?」
「いいさ、ゆっくりしよう。またあの二人組がやって来たら、その時に考えるよ」
少しでも長く朋を休ませようと、竜也は気楽にそう言った。
自分だけでも父の傍へいた方がいいのか、とも考えたが、朋と理紗の二人だけにするのは、心配だった。
そんな折、ドアをノックする音が。
「まさか」
理紗が、嫌そうな声を吐く。
果たして現れたのは、あのいつもの男二人だった。
「ご気分は、いかがですか?」
「医師を、お呼びしましょうか」
しかし今度は、もう一人男が加わっていた。
「手荒な真似をして、申し訳ございませんでした」
明らかに、他の二人より格上に見える、その風貌。
年齢は、正吾に近いように思われた。
長身で、がっしりした体格に、端正な顔立ち。
手首に着けた数珠は、高価な琥珀だ。
アルファ男性の持つ独特のオーラに、気圧されるようだ。
「私は、秋山 桔平(あきやま きっぺい)と言います」
その顔に、氏名に、竜也は覚えがあった。
「……秋山副社長、ですか?」
「さすが、来栖社長の息子さんだ。主任レベルの役職でも、本社トップの顔をちゃんと覚えておられる」
秋山は、ずいと部屋の中へ入って来た。
ともだちにシェアしよう!