61 / 107
第十一章・4
「いや、待ってください。私はこの春、ようやく主任になったくらいの人間で!」
「サポートは、この私がいたします。ぜひ、あなたが代表取締役に!」
真顔の秋山は、続けた。
「十和子さまの御子息・勇生さまは、肩書こそ専務取締役ではありますが、まともに仕事をなさらないのです」
遊び人の勇生を、秋山は嘆いた。
「また、十和子さまは、勇生さまがトップに立てば、社を組として。来栖組として、再び極道の看板を上げるつもりでおられます」
野心家の十和子を、秋山は憂えた。
「これらを解決するのは、竜也さん。あなたの力が必要です」
「……少し、考えさせてください」
朋のマンションで、二人組の男たちによって事前に知らされていたとはいえ、ここまで具体化しているとは。
秋山たちが退室した後、竜也は大きなため息をついた。
「大ごとになって来たなぁ」
「竜也さん……」
朋が、傍に寄って来る。
「平気平気。何とかなるさ」
朋を心配させまいと、竜也は笑顔を見せた。
(何があっても、朋がこうして傍にいてくれれば、乗り越えられる)
それは、この三ヶ月で育んできた、確信だった。
ともだちにシェアしよう!