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第十二章 対峙
「お母さん。よかったら、お風呂使ってください」
「朋くんが、先の方がいいんじゃない?」
理紗は、気分が悪くなっていた朋をいたわった。
「僕は、もう大丈夫ですから」
「そう? じゃあ、先に入るわね」
そんなやり取りを経て、理紗が浴室に消えた少しあと、部屋のドアが再びノックされた。
「また、秋山さんかな?」
竜也がドアに近づき開くと、すぐに強い香水の匂いが鼻をさした。
「お邪魔するわね」
入って来たのは、理紗と同じくらいの年齢と思われる、喪服の女性だ。
黒髪を結い上げ、大粒の黒真珠で飾られたヘアアクセサリーで留めている。
目鼻立ちの整った美人だが、やたらと化粧が濃い印象だ。
そしてその立ち居振る舞いから、プライドの高い傲慢さがにじみ出ていた。
「十和子さん、ですか? 」
竜也が訊ねると、彼女はつんと上を向いて、かすかにうなずいた。
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