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第十二章・2
訪問者は、十和子だけではなかった。
その後から入って来たのは、竜也よりやや若い男だ。
ミディアムルーズパーマの髪からのぞく耳には、ピアスが光っている。
喪服に身を包んではいるが、どこか着崩した、だらしなさがある。
顔立ちは十和子に似ており、その目は竜也を上から見下ろすような視線を放っている。
(そして彼が、勇生さん、か)
竜也は、すぐに把握した。
後は、護衛の男女が数人従っていた。
急いでお茶の支度をしようとする朋を、十和子は制した。
「お飲み物は、結構よ。お話は、すぐに済みます」
その割には、ゆっくりと室内を見渡す十和子だ。
「……理紗さんが、お見えにならないようだけど」
「母は、入浴中です」
「そう。まあ、いいわ」
十和子は竜也に向き直り、単刀直入に告げた。
「もし遺書に。クルス・不動産の次期社長に、竜也さんの名があれば、放棄しなさい」
秋山とは真逆のことを、十和子は要求してきたのだ。
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