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第十三章 敵の罠
正吾の告別式が終わり、火葬も執り行われた。
荼毘に付された彼は、あの大きく逞しかった体を、ほんの一抱えの小さな骨壺に納めてしまった。
僧侶の読経の後、一同は精進落としの会場へと足を運んだ。
高級ホテルの大ホールを貸し切り、贅を尽くした料理が並ぶ。
まるで結婚披露宴のような規模と、華やかさだ。
親族だけでなく、会社役員、古くからの友人たちまで招かれた。
大勢の人間が、今は亡き正吾を偲びながら歓談していた。
「朋、大丈夫か? もう、帰ろうか」
「ごめんなさい、竜也さん……」
だが朋は、ひどく体調を、心の安定を崩していた。
火葬場での一連の流れを目の当たりにし、ショックを受けてしまったのだ。
焼かれて白骨になった、正吾の姿。
まるで人体模型のようなそれを、火葬場のスタッフ・御坊(おんぼう)がていねいに砕いていく。
その生々しい、死という出来事を目撃してしまった。
しかもそれが、かつて愛した正吾なのだ。
まだ18歳の少年には、酷すぎた。
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