76 / 107
第十四章・3
後は、分かれた二社の重役などの人事が公表された。
正吾はそこまで、後のことを考えてくれていた。
竜也の会社には、クリーンな社員。
勇生の会社には、組の復活に賛成の社員をあてていた。
これほどきれいに分けられれば、それぞれで揉める心配はない。
正吾に仕えていた秋山は、感嘆した。
「来栖社長。あなたは、これほどまでにも、社の行く末をお考えになられて……」
そして遺言の公示が終わるとともに、竜也の席を訪れた。
「おめでとうございます、竜也さん」
「秋山さん」
正直、おめでたいのか解らない、と頭をかく竜也だ。
「しかし、父に託された以上は、やってみようと思います」
力を貸してください、との言葉に、秋山はその手をしっかり握った。
「全力で、サポートさせていただきます」
決意を固めたのは、いいとして。
「実は、朋が体調不良で席を外しておりまして」
「そういえば、お姿が見えませんな」
そこに、先に離席して医務室へ行っていた理紗が、青い顔で戻って来た。
「大変よ、竜也」
「どうしたの?」
「朋くんが、いないの」
ともだちにシェアしよう!