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第十四章・3

 後は、分かれた二社の重役などの人事が公表された。  正吾はそこまで、後のことを考えてくれていた。  竜也の会社には、クリーンな社員。  勇生の会社には、組の復活に賛成の社員をあてていた。  これほどきれいに分けられれば、それぞれで揉める心配はない。  正吾に仕えていた秋山は、感嘆した。 「来栖社長。あなたは、これほどまでにも、社の行く末をお考えになられて……」  そして遺言の公示が終わるとともに、竜也の席を訪れた。 「おめでとうございます、竜也さん」 「秋山さん」  正直、おめでたいのか解らない、と頭をかく竜也だ。 「しかし、父に託された以上は、やってみようと思います」  力を貸してください、との言葉に、秋山はその手をしっかり握った。 「全力で、サポートさせていただきます」  決意を固めたのは、いいとして。 「実は、朋が体調不良で席を外しておりまして」 「そういえば、お姿が見えませんな」  そこに、先に離席して医務室へ行っていた理紗が、青い顔で戻って来た。 「大変よ、竜也」 「どうしたの?」 「朋くんが、いないの」

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