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第十五章 宣戦布告
正吾の遺書が公開され、精進落としの場も、お開きとなった。
会場に訪れていた人々は、みな口々に竜也に祝いの言葉をかけていく。
何も知らない彼らに御礼を言いながら、竜也の頭は朋の安否でいっぱいだった。
お願いだから。
頼むから。
(どうか、無事で!)
やがてホールの片づけが始まり、竜也は理紗と秋山、そしてその部下たちと合流した。
「どうだった、母さん」
「ホテル内には、いないみたい」
「秋山さんは?」
「朋さんのマンションにも、戻っていないようです」
部下たちは、ホテル近辺の通りやショップをくまなく探したが、朋の姿は見られなかった。
あとは、行きつけのカフェ・白樺や、竜也のマンション、くらいか。
「そこに、いてくれればいいけど」
「うん……」
竜也は、考えていた。
少し目を離したすきに、全くいなくなってしまうなんて、通常ではありえない。
「フロントに、行ってくる」
(もしや、誘拐)
そんな思いが、芽生えていた。
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