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第十五章・4
竜也の言葉を聞いていた周囲は、大体の事情を把握していた。
その上で、彼は宣言した。
「警察に、協力してもらおう」
すぐに、秋山が止めに入った。
「待ってください。言わばこれは、内輪揉め。警察まで介入させるのは、巧いやり方ではありません」
マスコミに知られれば、社の信用は落ち、イメージダウンにもなる、と言う。
「とにかく、朋さんが無事なことは解ったのです。ここは、慎重に取引しましょう」
しかし、竜也は首を横に振った。
「慎重に当たっていては、手遅れになる可能性が高い」
この事件は、スピード勝負だ。
(でなければ、朋が危険な目に遭う!)
ほんのわずかしか交わってはいないが、竜也は勇生の粗暴な性格を見抜いていた。
彼なら何のためらいもなく、平気で朋を殴ったりするだろう。
そして、想像もしたくないが……。
(朋が、勇生にレイプされるかもしれないんだ)
絶対に、それだけは避けなければならない。
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