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第十六章・2

「先ほどもお話ししたように、来栖 勇生は暴力団・来栖組を復活させようと目論んでいます」 「ええ」 「ですから、もうすでに銃刀類で武装している可能性も高い」  竜也の言葉に、警部は戦慄した。  その読みが正しいのなら、特殊部隊や機動隊を準備しなくてはならない。  周辺住民の、避難もだ。 「おそらく勇生は、警察からの説得には応じないでしょう」  私が行きます、と竜也は申し出た。 「私が行って、クルス・不動産の権利を全て譲る、と言えば、勇生は応じると思うんです」 「しかし、あまりに危険です。とても、あなた一人で行かせるわけにはいかない」  そこで、と竜也は考えていた作戦を、警部に明かした。 「防弾チョッキを着て、勇生の居所に近づきます」 「うむ……」  一市民の竜也を危険にさらすこの作戦に、警部は難色を示した。  しかし、朋が監禁されている場所が解ると、竜也の賭けに乗らざるを得なくなった。 「被害者は、高層マンションの一室に拉致されていると思われます」  高層マンションの密室では、警察が集団で包囲することは難しい。  部下の報告に、警部は歯ぎしりした。 「いいでしょう、風野さん。あなたに、この事件を託します」 「ありがとうございます!」  竜也は、顔を上げた。 (朋、待ってろよ。今すぐに、助けに行くから!)

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