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第十六章・3
なるべく目立たないように気を配り、スーツタイプの防弾チョッキを、竜也は警部から受け取った。
それでも上からダウンジャケットを羽織り、念には念を入れる。
バレれば、竜也の命はないのだ。
「では、打ち合わせ通りに」
「朋の身柄を確保したら、ドアを三回ノックします」
その竜也の合図で、警察の特殊部隊が、勇生のいる部屋へ突入することになっている。
マンションや、その近隣住民を秘密裏に避難させ、機動隊が建物周辺を取り囲んだ。
一般市民になりすました特殊部隊がマンション内に潜入し、装備を整えた。
「竜也……」
「母さん、行ってきます」
お願い、と理紗は必死に祈っていた。
(お願い、正吾さん。竜也を、朋くんを守って……!)
秋山が、竜也にスマホを渡す。
「勇生さんに、コールしています」
「ありがとう」
やがて、勇生の声が聞こえ始めた。
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