87 / 107

第十六章・4

「もしもし。秋山、何の用だよ?」 『私だよ、勇生』 「なーんだ。竜也か」  片手にスマホ、もう一方の手にクリスタルグラスを持ち、勇生は軽い返事をした。  傍のベッドには、手錠で縛めた朋を転がしている。  数名の男たちが見張っている中、朋は耳をそばだてた。 (竜也さん!?)  勇生は、竜也と会話を続けていた。 『今、朋のいるマンションの前に、いるよ』 「意外と、早かったな」 『話がしたい。セキュリティを、解いてくれ』  一瞬、勇生は考えた。  今この場面でならば当然、相続の話だろう。 (だが、一人で来たのか……?)  黙ってしまった彼に、竜也が畳みかけて来た。 『クルス・不動産の社長の件で、話し合いたい』 「……まあ、いいだろう」  いざとなれば、こちらには朋という人質がある。  油断した勇生は、ロックを解いた。

ともだちにシェアしよう!