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第十六章・5
マンションの最上階へ、竜也はエレベーターで昇った。
ここは、十和子が勇生名義で購入したものだ。
最上階を買い占め、まさに牙城にしている。
その、一つの部屋の前で、竜也は止まった。
すぐにオートドアが開き、彼は無言で歩を進めた。
スーツ姿のいかつい男が、竜也を招く。
「こっちだ」
「朋は、無事なんだろうな」
返事はなく、竜也は奥のリビングへといざなわれた。
視界が開けると、彼の目は真っ先に朋を捉えた。
「朋! 無事か!?」
「竜也さん!」
無造作にソファに転がされた朋が身をよじると、金属音が鳴る。
(朋……、手錠を掛けられているのか)
どんなに、怖かっただろう。
竜也は、彼を一刻も早く自由にしてあげたかった。
だが、朋の前に立ち塞がる人間がいる。
勇生と、十和子だ。
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