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第十六章・6

「朋ちゃんが欲しかったら、相続は放棄するんだな」  その言葉に、竜也はためらわずうなずいた。 「朋さえ返してくれれば、社長の座は放棄する。遺産も、全て持って行くがいい」 「いい返事だ。麗しい愛情だねぇ」  滑稽に肩をすくめると、勇生は部下に合図をした。  手錠が外され、朋は竜也の元へと駆け寄った。 「竜也さん!」  震える朋の体を抱きしめ、竜也は次の一手を考えていた。  不敵に笑う、勇生。 「どうした? もう、お前たちは用済みだ」  早く行けよ、と手を振っている。 (何か臭うな)  竜也の心が、警報を鳴らしている。  勇生が、このままで済ませるとは思えないのだ。  緊張の糸を張り詰めたまま、竜也は朋を抱き寄せ、ドアに向かって歩き始めた。

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