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第十七章・2
「それでいいわ」
満足げに、十和子は竜也が書いた誓約書を手にした。
「後日、正式な書類に署名をしてもらいます」
もう、二度と会いたくはないのにな、と思いつつ、竜也はソファから立ち上がった。
今度こそ、脱出だ。
もつれる足取りの朋と歩調を合わせて、竜也はようやくドアの前までたどり着いた。
ところが、再び声が彼を呼び止めた。
「二人とも。俺が言ったこと、覚えてる?」
今度は、勇生だ。
ゆっくり振り返ると、彼はニヤニヤ笑っている。
「全てを俺のものにしてみせる、って。言ったよね?」
「私は全てを、お前に差し出したが?」
「もう一つ。可愛い朋ちゃんが、残ってるんだよ」
ねっとりとした声で、そう喋り終えると、勇生は銃口を竜也に向けた。
彼はやはり、銃で武装していたのだ。
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