93 / 107

第十七章・4

 朋の合図で、ドアのロックが外から撃ち壊された。  次々と、部屋になだれ込んでくるのは、警察の特殊部隊だ。 「な、何だ、お前たち!」  初めて聞く、慌てた勇生の声だ。  銃声、乱れる足音、怒号。  入り乱れる恐ろしい音の暴力に、朋は震えながら、横たわる竜也の上に被さっていた。 「真宮 朋さん、ですね?」  そこに、声が掛けられた。 「は、はい」  とっさに返事をすると、武装した男がうなずいている。 「ここは危険です。外へ」  男にいざなわれ、朋はよろめく竜也とともに部屋を出た。  廊下の角に広がるフロアに進み、エレベーターに乗り込んだ。  まるで別世界のように静かなエレベーターの中で、男の事務的な声だけが響く。 「真宮 朋さん、来栖 竜也さんの身柄を保護しました。ただいま、エレベーターで一階に向かっております」  男は、警察の特殊部隊だった。  無線で、マンションの外に待機している警部らに、報告をしたのだ。 「もう大丈夫ですよ」  頼もしいその声に、朋は竜也にすがった。 「竜也さん、大丈夫です、って。ね、だから。だから……」  痛みにうめく竜也に、朋はいつまでも声を掛け続けた。

ともだちにシェアしよう!