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第十七章・6

 サイレンを鳴らし病院へ急ぐ救急車の中で、横たわった竜也は、ようやく声が出せるほどになっていた。 「朋……、無事で、良かった……」 「僕は、大丈夫です。しっかりして、竜也さん」 「防弾チョッキを着ていたから、大、丈夫、だよ。……ッ痛」  僕を助けるために、あんな危険な真似を。  涙をぽろぽろこぼす朋の頬に、竜也は手を当てた。  冷たい、手だ。  朋はその手を取り、温めた。  いつも、僕を温めてくれていた竜也さん。  今こそ、僕が彼を温めてあげる番なんだ。 「朋……」 「何ですか?」 「今、すっごく、痛いんだ……」  だから、痛み止めのおまじないが欲しい。  そう言って、竜也は軽く片目を閉じて見せた。 「キス、してくれないかな」 「竜也さんの、バカ……。ホントに、もう……。馬鹿、バカ……」  朋は、竜也の乾いた冷たい唇に、キスをした。 「朋は……、あったかいなぁ……」  二人は何度も、何度でも、キスをした。

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