100 / 107
第十八章・5
食後に、竜也と朋は一緒にバスタイムを楽しんだ。
「僕、背中流してあげますね」
「ありがとう」
広い、竜也の背中。
そこに昇り竜の刺青は、無い。
(あ。でも……)
竜也の背中をスポンジで流しながら、朋は考えた。
(竜也さんの名前に、竜という字が入ってる)
もしかして正吾さんは、その名に思いを込めたのかもしれない。
勢いよく天に踊る、頼もしい竜になるように。
手が止まった朋に、竜也は話しかけた。
「どうかした?」
「いいえ」
朋はシャボンをシャワーで流し、バスタブに入った。
竜也がそれに加わると、勢いよく湯が溢れ出る。
笑いながら、朋は竜也に抱きついた。
ようやく笑顔が見られるようになった朋を、竜也は抱きしめた。
「朋。今夜……、いい? 明日、土曜日だし」
「明日は、接待ゴルフがあるんじゃなかったですか?」
お寝坊は、できないはずだ。
「断った。私は、ゴルフはあまり好きじゃないんだ」
「困った社長さんですね」
朋は、竜也にそっとキスをした。
もちろんそれは、OKのキスだった。
二人に、ようやく平穏が訪れていた。
ともだちにシェアしよう!