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第十八章・5

 食後に、竜也と朋は一緒にバスタイムを楽しんだ。 「僕、背中流してあげますね」 「ありがとう」  広い、竜也の背中。  そこに昇り竜の刺青は、無い。 (あ。でも……)  竜也の背中をスポンジで流しながら、朋は考えた。 (竜也さんの名前に、竜という字が入ってる)  もしかして正吾さんは、その名に思いを込めたのかもしれない。  勢いよく天に踊る、頼もしい竜になるように。  手が止まった朋に、竜也は話しかけた。 「どうかした?」 「いいえ」  朋はシャボンをシャワーで流し、バスタブに入った。  竜也がそれに加わると、勢いよく湯が溢れ出る。  笑いながら、朋は竜也に抱きついた。  ようやく笑顔が見られるようになった朋を、竜也は抱きしめた。 「朋。今夜……、いい? 明日、土曜日だし」 「明日は、接待ゴルフがあるんじゃなかったですか?」  お寝坊は、できないはずだ。 「断った。私は、ゴルフはあまり好きじゃないんだ」 「困った社長さんですね」  朋は、竜也にそっとキスをした。  もちろんそれは、OKのキスだった。  二人に、ようやく平穏が訪れていた。

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