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第十九章・4

「僕は、この水族館のイルカと同じだ、って。以前、言いました。自由が無い、って」 「うん。覚えてる」 「でも、今は違います。僕は、竜也さんという海の中で、自由に泳いでいるんです」  きゅっと、朋は竜也の手を握り返した。 「竜也さん。今度は、僕から言います。……結婚してください」 「朋……!」  周囲のざわめきが、竜也の耳には一瞬にして聞こえなくなった。  聞こえるのはただ、朋から贈られた大切な言葉。  そして、彼の胸の高鳴りだけだった。  返事に迷うことなど、無かった。 「喜んで。朋、私たち、結婚しよう」 「はい!」  我に返ると、竜也と朋は大勢の人々に囲まれていた。  誰もが笑顔で、拍手を贈ってくれる。  おめでとう、との声も上がった。 「ありがとうございます、皆さん!」 「僕たち、幸せになります!」  祝福を受け、朋の瞳に涙が浮かんできた。  ほんの行きずりの人々なのに、こんなにも温かい。  そして、この温かさに気づかせてくれたのは。 (僕の大好きな、竜也さんなんだ!)  朋の胸は、喜びでいっぱいに満ちた。

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