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2日目②

 朝食後3人は、ホテルを出て、目の前の河原町(かわらまち)通りを渡り、向かい側にあるバス停から、北行きの市バスに乗った。 「先に、地元の人に人気の商店街に寄るね。そこから下鴨神社(しもがもじんじゃ)まで橋を渡ればすぐなんだ」  小敏(しょうびん)が説明すると、文維(ぶんい)がクスリと笑った。 「どうせ、また何か食べる物を買うんだろう?」 「え~。あんなにたくさん朝ご飯をいただいたのに、まだ食べるのですか~」  文維と煜瑾(いくきん)の批判にも、小敏は動じることなくニンマリした。 「ふふふ。甘いものは別腹なんだよ」  そんな事を言っているうちにバスは河原町通りを北上し、今出川(いまでがわ)通りを越えた。 「降りるよ!」  小敏が声を掛けると、文維と煜瑾も立ち上がった。  そのまま小敏が1日乗車券を料金箱に通すと、初めての煜瑾が緊張した顔をして、小敏を見様見真似で1日乗車券を使って無事に下車した。午後から、明日からの研修会の打ち合わせのためにホテルに戻る文維は1日乗車券を持たずに、小敏がピッタリと用意した現金を払って下車した。  今の上海で現金、しかも硬貨を使うことが無くなった文維は、珍しそうにしている。 「日本の公共バスってキレイですね。車体もピカピカで新しいし、ゴミ1つ落ちていなかったし、車内で食事をしている人や物売りをしている人もいないですね」  日本人にとっては当たり前すぎることに感心する煜瑾が、小敏には可愛くて堪らない。 「ふふっ。煜瑾に気に入ってもらえてよかったよ。さあ、お目当ての豆大福を買わなくちゃ!」  そう言って小敏は煜瑾の手を引いてバス停から少し戻り、商店街の入口を通り過ぎた。 「ちょうど開店時間だから、並んでる人も少ないよ」  小敏がホッとしたように言うと、煜瑾はビックリして目を丸くした。 「開店前から人が並ぶような人気店なのですか!」 「そうだよ~。こんな古い商店街の小さなお店なのに、京都で知らない人は無いって言ってもいいくらいに有名なお店なんだ」  小敏の解説に、素直な煜瑾は大きく頷いて感心する。 「出来立てが美味しいから、お土産にしないで、食べ歩き用に買おうね。お土産には、もう一軒イイ所があるんだよ」  ニヤニヤする小敏を先頭に、地元のオバサマたちから妙な目で見られながら、スラリとした目立つイケメンの3人は「豆餅」を買う列に並んだ。

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