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2日目④
一旦バス通りの河原町通りまで戻り、賀茂川に掛かる葵橋を渡ると、下鴨神社まではもうすぐだ。
そこを、橋の上から北山の紅葉を見たり、景色を楽しみながら3人はフラフラと気楽に歩いた。
「神社の中にある茶店で、休憩しようよ。ここでしか食べられないお菓子とかお茶があるんだよ」
嬉しそうな小敏に、文維と煜瑾は顔を見合わせて笑ってしまう。
「ああ。街なかに、こんな大きな森があるんですね」
都市計画的に感心した文維が声を上げると、煜瑾も得心したように下鴨神社の鎮守の森である糺の森を見上げた。
糺の森に一歩足を踏み入れると、繊細な煜瑾などは空気が変わったように感じた。
静謐な森の中を、3人は並んで歩いた。
「疲れてない?煜瑾」
小敏に言われて、煜瑾は元気に首を横に振ったが、文維は恋人の手をソッと握って囁いた。
「少し休みましょう。小敏のオヤツタイムに付き合わないと、ね」
そう言った文維に煜瑾は可憐に微笑んだ。
小敏のおススメの神社内の茶店で、3人は休憩した。
店の名物の「申餅」と黒豆茶を頼んだのは小敏だけで、文維と煜瑾は黒豆だけを頼んだ。
申餅は、ひと口サイズの丸い団子のような形で、2個付いて来る。
小敏は、2個のうちのひとつをさらに半分に割り、煜瑾の口元に差し出した。一瞬恥ずかしそうにした煜瑾だったが、パクリと口に入れ、モグモグと味わう。
「文維も食べません?本当に甘さが控えめで上品なお菓子ですよ」
期待以上の感激に、煜瑾が言うと、小敏は煜瑾にあげた分の残り半分を文維に差し出した。文維も少し戸惑った顔をしたものの、すぐに口に入れた。小さな申餅の、さらに半分なので、くどさの無い甘さに文維も堪能した。
「美味しいですね」
申餅だけなく、飲んだことが無かった黒豆茶の香ばしさに3人は満足し、楽しく談笑してゆっくりと休憩をした。
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