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2日目⑤

 休憩を終え、3人は茶店を出た。目の前が神社の入り口にあたるという鳥居(とりい)だった。 「鳥居というのはね『結界(けっかい)』になっているんだよ」 「結界?」  日本のサブカルに強い小敏の自信満々の説明に、文維はすでに苦笑しているが、純粋な煜瑾は真剣な眼差しで聞いている。 「鳥居の外は人が住む俗世界で、鳥居の内側は神様の世界なんだよ」 「…ふ~ん…」  中国とは「神様」の概念が違うため、煜瑾はピンと来ないようだが、文化的、歴史的背景はリスペクトしているので、神妙な顔つきをしている。  鳥居をくぐると、小敏は煜瑾と文維を社務所の横にある背の高い木の下に連れて行った。 「なんですか、この木に、何か意味があるのですか?」  煜瑾が不思議そうに訊ねると、文維は真面目な顔をして木を見上げた。 「珍しいですね。自然に、こうなったのですか?」  文維の質問を小敏は満足そうな顔をして受け止める。 「気付いたようだね、文維クン!」 「…あ!この木…2本じゃないのですか?」  意味ありげな小敏の様子に、よくよく観察をした煜瑾が気付いた。  その木は確かに2本の木から始まっているのだが、不思議なことに途中から1本の木になっていた。 「それぞれ別の木だったのに、いつの間にか1つになって結ばれてるんだよ。まるで、文維と煜瑾みたいだよね」  小敏の言葉に、文維と煜瑾は顔を見合わせて、少しはにかみながらも幸せそうに微笑んだ。 「『連理(れんり)賢木(さかき)』って言ってね、縁結びの象徴なんだ。2人がずっと一緒にいられるように、この木にお願いしておくといいよ」  小敏の勧めに、文維と煜瑾は黙って言う通りにした。

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