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2日目⑪

 衝立(ついたて)で仕切っただけの、半個室ではあったけれど、純和風の(とこ)()もある感じのいい座敷に、3人は通された。  その雰囲気だけで、もう煜瑾は満足そうで、それを見守る文維も笑顔だ。大好きな2人が喜んでくれたら、それだけで小敏も嬉しくなる。 「コースもあるんだけど、好きな物だけ食べるほうが、煜瑾にはいいかな」  小食気味の煜瑾が、好きな物だけを食べて満足できるように、小敏は配慮したつもりだ。そんな、互いを理解し合った仲だから、気負いもなく、旅行中も楽しく過ごせるのだ。 「お飲み物は?」  注文を取りに来た、落ち着きのある高級料亭の仲居さんのような女性店員さんに、小敏は愛想良く微笑んだ。スラリとした長身で、色白で端整な顔立ちのアイドルのような花さえある、小敏の笑顔は上海だけでなく、京都でも十分有効だった。 「文維へのおススメは、やっぱり京都の地酒かなあ?この『聚楽第(じゅらくだい)』っていう純米吟醸酒は、唯一京都の中心部に残っている酒蔵の日本酒だよ。この蔵元の息子さんが、日本では有名な俳優さんなんだ」  息子が有名俳優であることと、日本酒の味がどう関係するのかよく分からない文維だったが、ここは京都をよく知る従弟(いとこ)の言うことを聞き入れることにする。 「煜瑾は、そんなに強いお酒を飲まないから…、この、京都産の柚子を使った柚子チューハイがいいんじゃないかな。香りもいいし、飲みやすいからね」 「小敏にお任せします」  素直な煜瑾は、自分のために親友が選ぶものに間違いが無いと信じていた。 「ボクは…最初は生ビール、ね」  飲物の注文を終えると、小敏はメニューを手に取り、端から端までしっかりと読み込む。煜瑾と文維は「本日のおすすめ」と書かれた手書きのメニューを、分かる文字だけを拾って、仲良く額を寄せ合っていた。

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