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2日目⑫
「やっぱり最初は、焼き鳥やさんらしいのから注文しようね。『もも串』とか『つくね』とか…ボク、『ささみの梅シソ串』も好きなんだよね~」
どことなく、小敏の声は、はしゃぎ気味で明るい。
「ねえねえ、小敏?これ、栗って書いてありますよね?日本の栗って大きくて甘いのでしょう?」
煜瑾の差し出したメニューを確認して、小敏はニッコリした。
「大きくて甘いのは『丹波 栗』って言って、京都の名物なんだよ。これは注文しないとね」
そう言って、小敏は丹波栗を豚肉で巻いて焼いた串と、同じく旬のイチジクやサツマイモを使った串などを注文した。
「京野菜も、煜瑾に食べさせたいな~」
楽しみながら小敏は、認定された京野菜である「万願寺唐辛子 」や「大黒 しめじ」、煜瑾たちには珍しいだろうと「生麩 」や「餅チーズ」なども注文した。
他にもいくつか一品料理も注文し、頼んだ飲物で乾杯し、写真を撮ったり、笑い合ったり、楽しい夕食の時間を過ごした。
最後に、こちらも京都産の原材料を使用した、芳醇な味のミルクアイスと、煜瑾にとっては初めてのほうじ茶アイスを注文した。
「もう、どれも美味しくて、本当に小敏には感謝しています」
「小敏が、こんなに出来る子だとは…。感心したよ」
大好きな2人から絶賛されて、小敏も嬉しそうだった。
お店を出ると、ホテルまでは腹ごなしに御池 通りを歩くことにした。
広々とした御池通りは、オシャレにライトアップされ、散策するのも楽しめるようになっている。
小敏は先導するように1人先を歩き、その後ろを仲良く文維と煜瑾が肩を並べて歩いた。
チラリと振り返った小敏は、文維と煜瑾がまるでデートのように睦まじく歩いているのが微笑ましく、少し強引ではあったけれども、京都に来てよかったな、と思った。
ホテルに戻ると、昨夜同様、文維は煜瑾たちを部屋まで送ってくれた。
さすがに明日からは研修会が始まるからと煜瑾が心配して、文維を引き留めるようなことはせず、ドアの内側でソッとおやすみなさいのキスだけをして、文維は1人自室へ戻って行った。
「明日からは文維は研修で、一緒に観光にも行けないし、夕食も別々だね」
小敏がからかうように言うと、煜瑾は落ち込むどころかニコリと微笑んだ。
「でも、朝食は毎日一緒に食べますよ」
余裕の煜瑾に、小敏は呆気にとられ、その後大きな声で笑った。
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