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3日目②

 国際会館駅で目的の寺院へ行くバスに乗り換える予定だったが、手前で下車して、豆腐や湯葉を使ったフレンチ風のレストランで、煜瑾と小敏はデザートまでついたランチを食べた。  初めての豆腐と湯葉の洋風のコースは、洋食に食べ慣れた煜瑾には食べやすかった。  湯葉のすり流しスープや汲み上げ湯葉など初めての湯葉料理を、煜瑾は大いに堪能した。  選べるメインディッシュは、小敏は肉料理、煜瑾は日本らしく天麩羅を頼んだ。  ご飯も、煜瑾は迷った末に、ツルリとした湯葉かけご飯を選んだが、小敏のちりめん山椒ご飯も気になって仕方がなかった。 「ふふふ。ボクのご飯、美味しそうだな~って思ってるでしょ」  チラチラ見てくる煜瑾に、小敏は笑いを噛み殺しながらそう言って、小皿に取り分けた。 「味見してみてよ」 「わあ~ありがとう、小敏!嬉しいです。じゃあ、私の湯葉かけご飯も食べて下さいね」  煜瑾の場合は、味見というよりも、自分が小食気味で食べきれないのを心配して、小敏に手伝ってもらうつもりで大目に取り分けた。  デザートの豆乳プリンを楽しんで、煜瑾が紅茶を飲んでいると、小敏は何かを店員に確認をしている。 「どうかしましたか?」 「ううん。紅葉を見に行くお寺には、ここからまたバスに乗るんだけど、バス停まで、何分かかるか聞いてみたんだよ」 「そうですか。じゃあ、次のバスに乗るには、何分にここを出ればいいのですか?」  煜瑾に訊かれて、小敏は事前にスマホに入れておいたバスの時刻表を確認した。 「ん~あと10分くらいかな」 「では、ゆっくりこの紅茶を飲み干してしまいますね」  優雅な煜瑾に微笑みかけ、小敏も残ったコーヒーに口を付けた。  時間になって、お会計を済ませ、煜瑾と小敏は店を出て東の方へ歩き始めた。 交差点の手前のバス停で、2人は京都バスを待った。 「バスに乗ったら、終点まで乗るからね」 「はい。とても美しい庭園なのでしょう?とても楽しみです」  瞳をキラキラさせる煜瑾の手を取り、小敏は公営の市バスではなく。民間の京都バスの「岩倉実相院」行きに乗り込んだ。

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