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4日目①

 今日もトップラウンジのブッフェで、3人揃っての美味しい朝食をいただいた。 「今日は少し早めに出るね」  昨日と同じく研修会のためにホテルから出られない文維に、小敏はそう言った。 「今日はどこへいくのですか?」  文維の問いに、今朝もまた(いとけな)く純真な笑顔で煜瑾が答える。 「今日は、午前中は博物館、午後からは有名な伏見稲荷(ふしみいなり)千本鳥居(せんぼんとりい)を見に行くのです」 「ああ、それはいいですね。ぜひ後で画像を見せて下さいね」 「はい」  キラキラした黒い瞳で頷く煜瑾を、文維は愛おし気に見守った。  今日の煜瑾は、キレイな水色のセーターに、茶色のPコート、それにスリムのブラックデニムを合わせ、活動的な男の子、と言った感じだ。  小敏もまたシンプルな黒のセーターだが胸に白いロゴが入っている。その上に黒い皮ジャンを羽織り、下はインディゴのデニムで、この上なくシンプルなコーディネートなのに、小敏自身の魅力からか、とても人目を引く。  魅力的な仲良しの2人は、まずはバスに乗って国立の京都博物館に向かった。ここでも、芸術好きの煜瑾はタップリと日本の文化財を楽しんだ。  広大な前庭も気持ちよく、煜瑾はご機嫌で、小敏とお喋りをしながら博物館の正門に出た。 「ねえ、煜瑾にソックリな仏像を探してみようか?」 「はい?」  無邪気に問いかける煜瑾に、小敏は優しく笑って通りの向かいを指さした。  そこにあるのは、有名な三十三間堂(さんじゅうさんげんどう)という歴史ある門跡寺院で、ここには1000体以上の仏像があり、その中には必ず自分に似た仏像があると言われていた。 「わあ~!」  煜瑾は、その壮観な眺めに声を失う。  三十三間(約120メートル)の細長い堂内には、仏像の森と呼ばれるほど、みっしりと仏像が並んでいた。  確かに、その1つ1つが、表情が違って見える。 「西安の兵馬俑(へいばよう)みたいですよね。1人1人顔が違う…」  その譬えが正しいのかどうか、なんとなく違和感を覚える小敏だったが、細かいことを気にしない性分を活かして、ニッコリと煜瑾に笑いかけた。

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