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6日目①

 ついに包文維たちが所属する、「上海先進医療学会」の京都研修会は昨日で終わり、帰国前の今日1日だけは、プライベートで過ごす貴重な1日だった。  朝から文維、煜瑾、小敏は、初日に利用した日本料理店での朝定食を食べに行く。予約が必要な特別な定食ではなく、客室を予約すると付いてくる一般用の和風の朝ご飯だ。 「本当に、上海の日本料理と、京都で食べる日本料理は違いますね」  煜瑾は文維の隣で、深く納得したように言った。 「そうだね。上海の和食も美味しいんだけど、やっぱり水とか調味料が違うのかなあ」  小敏が分かった風な口を利く。それを文維は緩い笑みで頷いた。  ビュッフェのように、行ったり来たりすることなく、ゆったりと朝食を摂ることができた3人は、活力を得て、最後の観光に元気よく出発するのだった。 ***  3人は地下鉄東西線で御池まで行き、烏丸線に乗り換えた。 「北山駅で降りるよ」  小敏に声を掛けられ、文維と煜瑾は地下鉄内に掲示されている路線図で仲良く確認をした。  駅に到着し、地上に上がって、煜瑾はパッと顔を明るくした。 「緑がいっぱいですね!ステキなお店も!」  植物園のある北山通りに出て、煜瑾は通りの美しさに感激した。 「煜瑾が好きそうな物があるんだけどな~」  意味ありげに小敏が言うと、無邪気な煜瑾が瞳を輝かせる。 「何ですか?」  小敏は笑いながら、煜瑾の手を引いて、その施設の入口へと向かう。 「陶板?名画?」  煜瑾は分かる文字を拾って、それが自分の興味のある美術に関係あるものだと気付いた。 「ここはね、『陶板名画の庭』っていう屋外式の美術館なんだ。世界でも有名な絵を陶板に転写して屋外でも見られるようにしてあるんだよ」 「陶板画なのですね」  煜瑾の表情はすでに興味津々で、その回廊式の庭園から聞こえる水音に耳を澄ませている。 「植物園とセット券にしようね」  小敏はさっそく3人分のチケットを購入した。

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