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6日目④
平日とは言え、人が多い清水寺に入ると、文維と煜瑾は手を繋いで有名な清水の舞台の上に立った。
周囲は紅葉が艶やかで、時空を超えた別世界にいるような錯覚をしそうになる。
「幽玄な光景ですね」
さすがにクールな文維も、目を細め、見入っている。
「写真も、動画もいらないです。ただ、しっかりとこの目に焼き付けておきたい景色です」
繊細な煜瑾はその目の前の自然の美しさだけでなく、悠久の歴史を感じさせる建物からの鑑賞に、感激して、うっとりしていた。
パチリ!
「え?」
文維のスマホのカメラのシャッター音に、我に返った煜瑾は振り返った。
「私は、自分の目だけでなく、こんな美しい煜瑾を記念に残しておきたいのです」
「もう、文維ったら、そんな風にふざけないで下さい」
温柔に、愛し気に微笑む文維に、煜瑾は、はにかみながらも嬉しさを隠せない。
「名残惜しいですが、行きましょうか?」
「はい」
2人は満ち足りた気持ちで、清水の舞台を後にした。
人混みの中、文維は煜瑾を庇うようにして、ゆっくりと歩いた。 人の流れに身を任せながら、2人はゆっくり、ゆっくり前へと進む。
煜瑾はふと、この歩みが、自分と文維のこれからの人生を表しているような気がした。
ゆっくり、ゆっくり、でも確実に前へと2人一緒に歩いて行く…。
そんな感慨に胸をいっぱいにして、煜瑾は文維と一緒に産寧坂(三年坂)の方へと向かった。
「知っていますか?」
門前通りである三年坂と呼ばれる通りに出ると、さすがに人の往来も緩やかになり、文維も煜瑾を守らねば、という緊張感から少し解放された。
そのせいか、優しく、それでもどこか悪戯っぽい笑みを浮かべて、煜瑾に訊ねた。
「何をですか?」
相変わらず煜瑾は屈託なく、純真な様子で文維を振り仰ぐ。
「この三年坂で転んだ人は、3年後に死んでしまうらしいですよ。
「え!」
驚いた煜瑾は石畳に足を取られて転びそうになるが、その腕をしっかりと掴んで文維が支えた。
「ビックリして、転んでしまう所でした」
煜瑾がそう言うと、文維は優しい口調ながら真剣な眼差しで言った。
「心配はいりません。煜瑾のことは、私が必ず守りますよ」
「…はい」
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