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第9話

「嫌わない」 ケイは分かることだけを言った。 怖い。 でも、キタノを嫌うことなんてもう出来ない。 キタノを心の奥まで入れてしまったのだから。 「センパイ・・・センパイ・・・」 キタノがケイを抱きしめる。 強く。 でも壊さないように。 抱きしめられた分厚い胸からキタノの匂いがした。 甘く思えた。 フェロモンは出てない、発情はしてないはずなのに。 でも、それは怖くて、なのにケイの腹の奥を疼かせた。 ケイは生まれてはじめて。 特定の誰かに欲情してる自分に気づく。 それは恐怖であり、甘い。 発情ではない。 それはカプセルによって抑制されてる。 でも、これは欲望だ。 嫌悪しているのに思わずしてしまうあの自慰と同じ。 それはキタノも同じだとわかった。 硬いモノがケイの腹に当たっている キタノは何もしない。 それは分かってる。 でも、欲情していて。 それは自分もそうなのだ。 怖い。 でも。 じゅくん 後ろの孔が疼いて、熱い何かが零れるのがわかった。 思わずピクリと震えてしまった。 自分のペニスも硬くそそりたっている 怯えたからだと思ったキタノにさらに抱きしめられ、キタノの太ももに自分のペニスが擦れて、喘いでしまった。 ケイの喘ぎにキタノもふるえる。 キタノの匂いが濃くなり、またキタノのそれが大きくなり、キタノの欲望もまた一つ深くなったことを知る でも、キタノは耐える。 キタノは何もしない。 でもケイを離さない。 生まれて初めての他人への欲望に逆らえないのはケイの方だ。 腰を揺らしてしまう。 ペニスをキタノの腹に擦り付けてしまう。 ああ、孔が濡れてる。 中を指で擦りたい。 それが気持ちいいのはもう知ってる。 「センパイ・・・」 キタノの声も苦しそうだ。 だがキタノは抱きしめることは止めないし、それ以外は絶対にしない。 「嫌わない、嫌わないから・・・離して・・・」 ケイは泣きながら言う。 したかった。 キタノがいるのに自慰がしたかった。 いや、キタノに触れながら孔を弄りたかった。 気持ちいいとこで、何度も達したかった。 でも、なんでそんなことを思うのかはわからない。 自分がオメガで。 キタノがアルファだから? それは嫌だった。 「嫌わない?オレを嫌わない?」 キタノが泣きながら聞く。 「嫌わない・・・」 ケイは答えた。 それだけは本当。 キタノを今更嫌えるわけがない。 キタノが腕を緩めてくれたので、ケイは自分のズボンへと指を伸ばしてしまった。 キタノは緩くケイの腰に腕を回したまま、それを食い入るように見ている。 ケイもキタノから目を離せない。 これは本能? なら嫌だ。 でも。 止まれなかった。 我慢出来ずにしてしまう、あの自慰のように。 ケイの指が震えてズボンが開けられない。 キタノの指がケイに触れないようにして、ペルトを緩めズボンのボタンとチャックをずらしてくれる。 ケイは、震える指で下着とズボンをずらして、もう勃起して、先から滴っているペニスを弄りはじめた。 キタノに抱かれたまま。 キタノの視線の熱さ。 見られていること。 それが快楽を増幅させているなんて、最初から分かってた。 ズボンは膝まで下ろされ、ケイは後ろの穴にも指を入れようとする。 熱く濡れてズクズク疼くそこを。 でも立ったままだといつものように出来ない。 キタノがそっとケイを抱え込んだ。 「何もしません。何も」 宥める声。 それを信じた。 キタノは誰もいない河原にケイを軽々と片手で抱えたまま、自分の上着を引き、そこにケイを下ろした。 そしてケイの上に覆いかぶさり、ケイを外から隠した。 この河原には今は誰もいないが、万が一のことを考えたのだとケイは分かる。 ケイを隠してくれている。 ケイがしたいことをするために。 ケイは、それでも欲望を隠そうとはしない目に見つめられ、でも、決して自分を傷つけないキタノの身体の下で、キタノを見つめ返しながら自慰を始めた。 弄るのは孔だ。 脚を立てて、腰を浮かし、震える指を濡れそぼったソコに沈めた。 くちゃ くちゃ 濡れた音。 疼くそこを指でかき混ぜるのは、甘く痺れるほど気持ち良かった。 「あっ・・・ああっ・・・んっ」 ケイの切ない声が盛れ始めていく。 キタノは呻きながら、でも微動だにせずにそれを見つめていた。

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