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第11話

気がつくとキタノの背中の上で揺られてた。 いつの間にか山から降りて地元の町にいた。 夕暮れの街の中、背負われていた。 小さな子供みたいで恥ずかしかったが、もういいか、とも思った。 ケイの家へ向うその道は人気がなかったし、もうとっくに色んな人に見られただろうし。 なんかぐったりしていたし。 キタノは目覚めたのに気付いただろうに、なんにも言わない。 でもキタノは暖かい。 キタノの背中は暖かい。 キタノにはケイを背負って2人分の荷物を持つことなどなんてことはない。 だってアルファだから。 「キタノ」 ケイはキタノを呼んだ。 キタノはビクッと震えた。 怯えているのはキタノなのだとわかってケイは何故か安心した。 「無かったことにしよう」 ケイはそう言った。 その方がいい。 怖くて気持ち良くて、あんなの。 獣に喰われることを怯えながら、そこに快楽があるよつな。 あんなの。 あんなの。 嫌だった 「はい」 キタノはそう言った。 安心しているようでもあった 「何も変わらない。何も」 ケイは言った。 オメガになりたくないケイと、アルファでいたくないキタノ。 それでいい。 「はい」 キタノは言った。 「センパイ好きです」 それも。 「わかった」 ケイはそれを受け入れた。 「・・・怖いのは嫌だ」 ケイはつぶやき、キタノは背中を強ばらせ、断言した。 「怖いことなんかしません」 キタノの言葉は信用できた。 だってキタノだから。 「うん」 ケイは目を閉じた。 恐ろしいはずのアルファの背中でとても安心したから。 ケイは無防備にまた眠りに落ちた。 「怖いことなんて。しない」 キタノか何度も何度も呟いていたのはもうケイにはきこえなかった。

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